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会長挨拶

プランクトン学会 会長就任にあたって

 2023年度より2年間、日本プランクトン学会会長を仰せつかった広島大学の大塚攻(オオツカ ススム)でございます。2020 年初頭から3年間以上にも渡り世界中に猛威を奮った新型コロナウイルスの脅威もようやく終息が見えてきた時期で、社会にもようやく安堵の声が囁かれ始めました。このような中、伴修平前会長が尽力され、2023年3月21日には久々の対面による学会70周年シンポジウム「プランクトン学会の過去、現在、未来」が開催されました。私も副会長として参加させていただきましたが、先人の研究に対する熱意、努力を感じざるを得ませんでした。また、研究のみならず、プランクトンに関わる教育、職業、産業などの話題提供いただいた他、 この場にはお洒落なクラゲの装飾品、プランクトンを利用した啓発活動や教育との関わり、原爆で亡くなった森喬以氏のカイアシ類モノグラフに使われた亜鉛凸版の展示もありました。展示担当者のみなさんの顔には自信と活気に満ちていたのが印象的でした

 「現代の生物学は遺伝子の時代である」ということが言われています。私の学生のころには想像もできなかったことです。関連する研究成果は凄まじい勢いで出版され、技術そのものはルーティン化している現状です。この技術革新のお陰で我々は多くの未知なる生物学的現象や進化を理解できるようになりました。しかし、それらの技術だけでは見えないこともたくさんあります。どんな技術でも生物の一部しか見ることができないのです。やはり生物学は総合的学問であると感じることも多い今日このごろです。化学系、地学系、工学系の方々と組んで融合領域的な研究にチャレンジされている方々もお見受けします。プランクトン学は実に裾野が広い学問であることを再認識しています。どんどんとこのような研究が進むことを期待します。プランクトンは人間の生活と直接的、間接的に密接に関連しています。特に我々の水産資源を根底から支えている生態的機能があることはゆるぎのない事実です。一方ではクラゲ類の大量発生、赤潮、貝毒など人間を苦しめる存在でもあります。しかし、その重要性は社会にはなかなか浸透していません。美しいプランクトン図鑑類が数多く出版されてきたことはこの状況の改善に繋がると期待しています。今後、様々な場所でこのことをアピールしていく必要があるでしょう。少し大げさかもしれませんが、プランクトンは人類の存続、地球環境の持続性の鍵を握っているように考えています。

 未解決の問題も多いプランクトン研究です。若手の奮起に期待すると同時に、一般社会からプランクトンに興味を持ってもらう工夫が必要だと思います。学会員が一丸となって相互に助け合ってプランクトンの研究教育に励み、様々な能力を有する若手育成を支え合う環境が醸成されること願って止みません。

広島大学
大塚 攻